漱石・読んだふり 「吾輩は猫である」 各論① 一
漱石
漱石・読んだふり 「吾輩は猫である」 各論① 一
時期
明治37年(一の中では年の言及はないが、後の章でわかる)秋〜12月
登場人物(登場順)
・吾輩:本作品の語り手。雄猫。「波斯産の猫の如く黄を含める淡灰色に漆の如き斑入りの皮膚を有している」。
・書生:吾輩を笹原の中へ捨てた人物。
・隣家の三毛:言及のみ。吾輩の友人の猫。代言の主人を持つ。
・おさん:吾輩が住む家の下女。
・この家の主人:苦沙味先生。吾輩の飼い主。
・ここの家の小供:五つと三つ。
・細君:苦沙味先生の妻。
・筋向の白君:吾輩の友人の猫。軍人の家に住む。
・迷亭:苦沙味先生の友人。美学者。一では名前ではなく「美学者」と呼ばれている。金縁の眼鏡をかけている。
・車屋の黒:純粋の黒猫。「この近辺で知らぬ者なき乱暴猫」。吾輩の雑談相手。
ストーリー
・吾輩が捨てられて主人の家に棲みつくまでの経緯
・主人の紹介
・人間批判
・主人が水彩画に凝る話
・車屋の黒との出会いと雑談(鼠とりについて)
・主人の日記の内容(12月1日:通人論、4日:自分の水彩画について)
・迷亭が嘘をついて人を担ぐのが好きな話
言及される歴史上の人物・事項
・『ほととぎす』
「俳句をやって『ほととぎす』へ投書をしたり」(p12 岩波文庫 以下同様)
・『明星』
「新体詩を『明星』へ出したり」(p12)
・平の宗盛
「これは平の宗盛にて候を繰り返している」(p12)
・アンドレア・デル・サルト
「昔し以太利の大家アンドレア・デル・サルトが言った事がある。画をかくなら何でも自然その物を写せ。」(p13)
・ニコラス・ニックルベー
・ギボン
・『仏国革命史』
「ある学生にニコラス・ニックルベーがギボンに忠告して彼の一世の大著述なる『仏国革命史』を仏語で書くのをやめにして英文で出版させたと言った」(p22)
・ハリソン
・『セオファーノ』
「ハリソンの歴史小説『セオファーノ』の話がでた」(p22)
・レオナルド・ダ・ヴィンチ
「レオナルド・ダ・ヴィンチは門下生に寺院の壁のしみを写せと教えた事があるそうだ」(p22)
語句・表現
・一樹の陰:この世の人との出会いや関係は全て、前世の縁によるものということ。
・タカジヤスターゼ:高峰譲吉の創製したデンプン消化酵素剤の商標名。主成分はアミラーゼであるが,プロテアーゼ,リパーゼなども含む。
・へっつい:穀物や食料品などを加熱調理する際に火を囲うための調理設備。竃。
・新体詩:明治期の詩の一形態。それまでの日本の和歌,俳諧,漢詩などに対して,ヨーロッパの詩歌の形式と精神を取入れ新しい形式を目指した詩。外山正一,矢田部良吉,井上哲次郎共編の『新体詩抄』に由来する。
・後架:禅寺で、僧堂の後ろに設けた手洗い場。また、そのかたわらに便所もあったところから、便所のこと。
・ワットマン:麻繊維を原料とする純白で厚手の高級水彩図画用紙。1760年英国のワットマンJ.Whatmanが漉き始めた。
・露華:美しい露。
・浩然の気:物事にとらわれない、おおらかな心持ち。もとは中国,戦国時代の儒家,孟子が説いた、天地の間に満ちわたる生命と活力のもとになる気。
・寒竹:タケの一種。節間はやや紫色を帯び、皮に紫斑がある。秋にたけのこが出る。紫竹しちく。古くは孟宗が母のために冬の雪中にタケノコを掘った故事になぞらえて孟宗竹と呼ばれていたが、現在に言うモウソウチクは別の竹。
・檣壁:石・煉瓦・土などで築いた塀。
・喟然:ため息をつくさま。嘆息するさま。
・山出し:田舎から出てきたままで洗練されていないようす。
・劈頭:物事のいちばん初め。最初。冒頭。
・つくばい:茶室の露地に低く置かれた石製の手水鉢 。茶客が入席する前にここで手を清めるが,そのとき体を低くしてつくばう(蹲踞)のでこの名が生れた。
現代でも当てはまる言説
・「元来人間というものは自己の力量に慢じて皆んな増長している。少し人間より強いものが出て来ていじめてやらなくてはこの先どこまで増長するか分からない。」(p15)
・「人間てものあ体の善い泥棒だぜ」(p19)
読みづらい漢字
・痞え(つか・え)
・顫える(ふる・える)
・剿滅(そうめつ)
・寒鴉(かんあ)
・吶喊(とっかん)
・一廉(ひとかど)
疑問点
・一、二では、主人の小供は2人として出ているが、後の回(四・十)では3人として出てくる。
・p9に「吾輩の主人は滅多に吾輩と顔を合せることがない。」とあるが、次の頁では「吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主人の傍にいる事をつとめた。朝主人が新聞を読むときは必ず彼の膝の上に乗る。彼が昼寝をするときは必ずその背中に乗る。」と書かれている。
参考図書
『漱石全集』第一巻、第二巻 岩波書店 1978年
『吾輩は猫である』 岩波文庫
『漱石大全』Kindle版 第3版 古典教養文庫
『カラー版新国語便覧』 第一学習者 1990年
『漱石とその時代』1~3 江藤淳 著 新潮選書
『決定版 夏目漱石』 江藤淳 著 新潮文庫
『夏目漱石を読む』 吉本隆明 著 ちくま文庫
『特講 漱石の美術世界』 古田亮 著 岩波現代全書
本日もご訪問いただきありがとうございました。
時期
明治37年(一の中では年の言及はないが、後の章でわかる)秋〜12月
登場人物(登場順)
・吾輩:本作品の語り手。雄猫。「波斯産の猫の如く黄を含める淡灰色に漆の如き斑入りの皮膚を有している」。
・書生:吾輩を笹原の中へ捨てた人物。
・隣家の三毛:言及のみ。吾輩の友人の猫。代言の主人を持つ。
・おさん:吾輩が住む家の下女。
・この家の主人:苦沙味先生。吾輩の飼い主。
・ここの家の小供:五つと三つ。
・細君:苦沙味先生の妻。
・筋向の白君:吾輩の友人の猫。軍人の家に住む。
・迷亭:苦沙味先生の友人。美学者。一では名前ではなく「美学者」と呼ばれている。金縁の眼鏡をかけている。
・車屋の黒:純粋の黒猫。「この近辺で知らぬ者なき乱暴猫」。吾輩の雑談相手。
ストーリー
・吾輩が捨てられて主人の家に棲みつくまでの経緯
・主人の紹介
・人間批判
・主人が水彩画に凝る話
・車屋の黒との出会いと雑談(鼠とりについて)
・主人の日記の内容(12月1日:通人論、4日:自分の水彩画について)
・迷亭が嘘をついて人を担ぐのが好きな話
言及される歴史上の人物・事項
・『ほととぎす』
「俳句をやって『ほととぎす』へ投書をしたり」(p12 岩波文庫 以下同様)
・『明星』
「新体詩を『明星』へ出したり」(p12)
・平の宗盛
「これは平の宗盛にて候を繰り返している」(p12)
・アンドレア・デル・サルト
「昔し以太利の大家アンドレア・デル・サルトが言った事がある。画をかくなら何でも自然その物を写せ。」(p13)
・ニコラス・ニックルベー
・ギボン
・『仏国革命史』
「ある学生にニコラス・ニックルベーがギボンに忠告して彼の一世の大著述なる『仏国革命史』を仏語で書くのをやめにして英文で出版させたと言った」(p22)
・ハリソン
・『セオファーノ』
「ハリソンの歴史小説『セオファーノ』の話がでた」(p22)
・レオナルド・ダ・ヴィンチ
「レオナルド・ダ・ヴィンチは門下生に寺院の壁のしみを写せと教えた事があるそうだ」(p22)
語句・表現
・一樹の陰:この世の人との出会いや関係は全て、前世の縁によるものということ。
・タカジヤスターゼ:高峰譲吉の創製したデンプン消化酵素剤の商標名。主成分はアミラーゼであるが,プロテアーゼ,リパーゼなども含む。
・へっつい:穀物や食料品などを加熱調理する際に火を囲うための調理設備。竃。
・新体詩:明治期の詩の一形態。それまでの日本の和歌,俳諧,漢詩などに対して,ヨーロッパの詩歌の形式と精神を取入れ新しい形式を目指した詩。外山正一,矢田部良吉,井上哲次郎共編の『新体詩抄』に由来する。
・後架:禅寺で、僧堂の後ろに設けた手洗い場。また、そのかたわらに便所もあったところから、便所のこと。
・ワットマン:麻繊維を原料とする純白で厚手の高級水彩図画用紙。1760年英国のワットマンJ.Whatmanが漉き始めた。
・露華:美しい露。
・浩然の気:物事にとらわれない、おおらかな心持ち。もとは中国,戦国時代の儒家,孟子が説いた、天地の間に満ちわたる生命と活力のもとになる気。
・寒竹:タケの一種。節間はやや紫色を帯び、皮に紫斑がある。秋にたけのこが出る。紫竹しちく。古くは孟宗が母のために冬の雪中にタケノコを掘った故事になぞらえて孟宗竹と呼ばれていたが、現在に言うモウソウチクは別の竹。
・檣壁:石・煉瓦・土などで築いた塀。
・喟然:ため息をつくさま。嘆息するさま。
・山出し:田舎から出てきたままで洗練されていないようす。
・劈頭:物事のいちばん初め。最初。冒頭。
・つくばい:茶室の露地に低く置かれた石製の手水鉢 。茶客が入席する前にここで手を清めるが,そのとき体を低くしてつくばう(蹲踞)のでこの名が生れた。
現代でも当てはまる言説
・「元来人間というものは自己の力量に慢じて皆んな増長している。少し人間より強いものが出て来ていじめてやらなくてはこの先どこまで増長するか分からない。」(p15)
・「人間てものあ体の善い泥棒だぜ」(p19)
読みづらい漢字
・痞え(つか・え)
・顫える(ふる・える)
・剿滅(そうめつ)
・寒鴉(かんあ)
・吶喊(とっかん)
・一廉(ひとかど)
疑問点
・一、二では、主人の小供は2人として出ているが、後の回(四・十)では3人として出てくる。
・p9に「吾輩の主人は滅多に吾輩と顔を合せることがない。」とあるが、次の頁では「吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主人の傍にいる事をつとめた。朝主人が新聞を読むときは必ず彼の膝の上に乗る。彼が昼寝をするときは必ずその背中に乗る。」と書かれている。
参考図書
『漱石全集』第一巻、第二巻 岩波書店 1978年
『吾輩は猫である』 岩波文庫
『漱石大全』Kindle版 第3版 古典教養文庫
『カラー版新国語便覧』 第一学習者 1990年
『漱石とその時代』1~3 江藤淳 著 新潮選書
『決定版 夏目漱石』 江藤淳 著 新潮文庫
『夏目漱石を読む』 吉本隆明 著 ちくま文庫
『特講 漱石の美術世界』 古田亮 著 岩波現代全書
本日もご訪問いただきありがとうございました。
スポンサーサイト
コメント