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対訳『古事記伝』 120

本居宣長
06 /01 2023
596.此レは此ノ記のみならず、書紀萬葉などの假字にも、此ノ定まりほのぼの見えたれど、其はいまだ徧(アマネ)くもえ驗(ココロミ)ず、

訳:これは『古事記』だけでなく、『日本書紀』や『万葉集』の仮名にも、同じような使い分けがちらほら見られるが、それに関してはよく検討していない。
 

597.なほこまかに考ふべきことなり、

訳:もっと詳細に調べる必要がある。


598.然れども、此記の正しく精(クハ)しきには及ばざるものぞ、

訳:しかし、それらは『古事記』中での正しさ精しさには及ばない。

 
599.抑此ノ事は、人のいまだ得見顯(エミアラハ)さぬことなるを、己(オノレ)始メて見得(ミエ)たるに、凡て古語を解く助となること、いと多きぞかし、

訳:そもそもこの事実は、まだ人が気付かなかったのを、私が初めて気づいたのであり、古語を解明する上で助けとなることが多いであろう。


600.○二合の假字 こは人ノ名と地ノ名とのみにあり、
[アム]淹 淹知(アムチ)
[イニ]印 印惠(イニエノ)命、印色之入日子(イニシキノイリビコノ)命
[イチ]壱 壱比韋(イチヒヰ)、壱師(イチシ)
[カグ]香 香山(カグヤマ)、香用比賣(カグヨヒメ)
[カゴ]香 香余理比賣(カゴヨリヒメ) 香坂王(カゴサカノミコ)
[グリ]群 平群
[サガ]相 相模(サガム)、相樂(サガラカ)
[サヌ]讃 讃岐(サヌギ)
[シキ]色 印色之入日子(イニシキノイリビコノ)命
[スク]宿 宿禰(スクネ)
[タニ]丹旦 丹波(タニハ)、旦波(タニハ)
[タギ]當 當麻(タギマ)
[ヂキ]直 阿直(アヂキ)
[ツク]筑竺 筑紫(ツクシ)、竺紫(ツクシ)
[ヅミ]曇 阿曇(アヅミ)
[ナニ]難 難波(ナニハ)
[ハハ]伯 伯伎(ハハキ)
[ハカ]博 博多(ハカタ)
[ホム]品 品遲部(ホムヂベ)、品夜和氣(ホムヤワケノ)命、品陀和氣(ホムダワケノ)命
[マツ]末 末羅(マツラ)
[ムク]目 高目郎女(コムクノイラツメ)
[ラカ]樂 相樂(サガラカ)
凡て古書地名に此ノ類いと多し

訳:○二音の仮名 これらは人名と地名にのみ使用されている

[アム]淹 淹知(アムチ)
[イニ]印 印惠(イニエノ)命、印色之入日子(イニシキノイリビコノ)命
[イチ]壱 壱比韋(イチヒヰ)、壱師(イチシ)
[カグ]香 香山(カグヤマ)、香用比賣(カグヨヒメ)
[カゴ]香 香余理比賣(カゴヨリヒメ) 香坂王(カゴサカノミコ)
[グリ]群 平群
[サガ]相 相模(サガム)、相樂(サガラカ)
[サヌ]讃 讃岐(サヌギ)
[シキ]色 印色之入日子(イニシキノイリビコノ)命
[スク]宿 宿禰(スクネ)
[タニ]丹旦 丹波(タニハ)、旦波(タニハ)
[タギ]當 當麻(タギマ)
[ヂキ]直 阿直(アヂキ)
[ツク]筑竺 筑紫(ツクシ)、竺紫(ツクシ)
[ヅミ]曇 阿曇(アヅミ)
[ナニ]難 難波(ナニハ)
[ハハ]伯 伯伎(ハハキ)
[ハカ]博 博多(ハカタ)
[ホム]品 品遲部(ホムヂベ)、品夜和氣(ホムヤワケノ)命、品陀和氣(ホムダワケノ)命
[マツ]末 末羅(マツラ)
[ムク]目 高目郎女(コムクノイラツメ)
[ラカ]樂 相樂(サガラカ)
どれも古書の地名にこの種類の表記が非常に多い



参考書籍
『本居宣長全集』第九巻 筑摩書房 1966年
『岩波古語辞典』 岩波書店 1974年
『古事記注釈 第一巻』 西郷信綱 著 ちくま学芸文庫 2005年
『本居宣長『古事記伝』を読む』Ⅰ~Ⅳ 2010年
『新版古事記』 中村啓信 訳注 KADOKAWA 2014年 電子書籍版
『改訂増補 古文解釈のため国文法入門』 松尾聰 著 2019年
『日本書紀上・下』 井上光貞監訳 2020年 電子書籍版



参考サイト
雲の筏:http://kumoi1.web.fc2.com/CCP057.html


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