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金子みすゞ私的鑑賞  130. 硝子のなか

金子みすゞ
04 /04 2023
硝子のなか  

おもての雪が見えるので、
ひらひらお花のやうなので、
明り障子の繪硝子(えがらす)を、
お炬燵(こた)にあたつて見てゐたら、

うらの木小屋へ木をとりに、
雪ふるなかを歩いてく、
お祖母(ばあ)さまのうしろかげ、
ちらちら映つて、消えました。


『金子みすゞ全集』 Ⅲ さみしい王女 p110


2連8行
6、6。 10、10。 13、13。 6、6。 11、11。 13、13。


家の中で炬燵にあたって明かり障子の絵硝子越しにおもての雪が降る様子をぼんやりながめるみすゞさんと、雪の降る中忙しく働くお祖母さまの「暖と寒」「静と動」「若と老」が対照的です。


みすゞさんの詩のなかでは比較的動詞の割合が多いものになっています。

特に前半は「見える」「見る」「ゐる」といった動詞でも静的な意味のものが使われ、後半の「お祖母さま」の動きが強調されている印象を受けます。


みすゞさんの詩では通常連の終わりは句点がついていますが、この詩の第一連の終わりは読点になっています。

この詩は形式上2連構成ですが、おそらくみすゞさんのなかでは意味上1連ものなのだと思われます。



名詞:     おもて、 雪(2回)、 お花、 明り障子、 繪硝子、 お炬燵、 うら、 木小屋、 木、 なか、 お祖母さま、 うしろかげ

形容詞:   (―)

動詞: 見える、 あたる、 見る、 ゐる、 とる、 ふる、 歩く、 映る、 消える



通算登場回数  
今回登場     (お)花:11作目   雪(雪の日):8作目   お祖母さま:4作目
 
今回登場なし  (お)空(夕ぞら、青空、夜ぞら、夕やけ空):34作目    (お)海(外海内海):26作目   青(青い、青む):20作目    母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):19作目    赤(赤い、あかい):19作目   白(白い、しろい、眞白な):16作目    (お)舟・小舟・船・帆かけ舟:15作目  雲(雲間):12作目   お月さん(お月さま、月、月夜):11作目     (お)星(さま):8作目    黒(黒い):8作目   波:7作目    (お)魚(さかな):6作目(タイトルのみ1作)    (お)父さま(父さん):4作目    みどり(こみどり):4作目    石ころ(石):3作目 紅い:2作目 紺:2作目   藍いろ:1作目   紫(むらさき):2作目   金:1作目   さくら:1作目  


参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年



本日もご訪問いただきありがとうございました。



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コメント

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No title

以前に、支援学級で、仕事をしていたときに
私の担当の女の子(当時、小学2年か3年のとき)、ダウン症の女の子。
色が白くてかわいい可愛いAちゃん。

Aちゃんと、金子みすゞの詩の一つを、一緒に暗唱しながら
その詩に、フリをつけました。

繰り返して暗唱して、フリをつけるとAちゃんは
上手にできるようになりました。

コトバをきちんと発声して、単語とフリを同一できて、
かなり素敵な詩人の朗読者でした。

小学校の教頭先生の女性が私に注意しました。
そんなことを教えるより、もっと生活に必要な動作を教えて下さいと。

そして、くだらないと禁止になりました。
忘れられない思い出。

Aちゃんと私には、素敵な時間だったのだけれど・・・・

No title

その小学校の教頭先生は、Aちゃんの両親が亡くなった後でも一人で生きていける術をつけさせたかったのでしょう。ただ、そのことしか頭になく、Aちゃんにとって何をすることが楽しくて自分らしさを感じることができるのかといった情操面の重要さに目を向けることができない人だったのでしょう。
一つの価値観しか認められない人が、勤続年数と筆記試験だけで校長・教頭になれる制度があることが残念です。

Radiology2003

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