『日本文学史序説』Paragraph Briefings 社会的背景 その3
加藤周一
⑪文学的階層が時代とともに変わってきたことが日本文学の表現形式や美学や素材を多様化してきたことの要因である。一方民衆が生み出した文学や文学に反映した民衆の精神を三種類の資料に求めることができる。
⑫資料の第一は、民衆が生みだした歌謡や伝説を文化的選良が蒐集し、記録し、その作品のなかに挿入したもの(記紀歌謡、説話集の中の挿話の一部)。第二は、文化的選良が同じ階層の読者のために書いた作品(西鶴の作品、『膝栗毛』『浮世風呂』)。第三は、民衆がしばしばつくり、常に享受した作品(落語、川柳、明治大正時代の大衆小説)。それらにあらわれた民衆の感情・感覚的世界には一貫したものがある。
⑬日本文学史のもう一つの社会学的特徴は、作家がその属する集団によく組みこまれ、かつその集団が外部に対して閉鎖的な傾向を持っていたことが挙げられる。そのことには二つの面がある。一つの面は支配階級の文化または支配体制全体への文学の組みこまれ(平安朝の文学–貴族社会、徳川期の文学–武士社会または町人社会)。
⑭二つ目の面は、支配階級からの逃避(鎌倉室町期の隠者文学–武士権力)。
⑮太平洋戦争以後の現代においても、大衆社会への作家の組み込まれ(風俗小説から三島由紀夫)と大衆社会の中で極端に疎外更田作家の小集団形成の傾向(多くの同人雑誌)が見られる。
使用書籍
・『加藤周一著作集』巻4・巻5 平凡社 1979年
本日もご訪問いただきありがとうございました。

備忘録・雑記ランキン
⑫資料の第一は、民衆が生みだした歌謡や伝説を文化的選良が蒐集し、記録し、その作品のなかに挿入したもの(記紀歌謡、説話集の中の挿話の一部)。第二は、文化的選良が同じ階層の読者のために書いた作品(西鶴の作品、『膝栗毛』『浮世風呂』)。第三は、民衆がしばしばつくり、常に享受した作品(落語、川柳、明治大正時代の大衆小説)。それらにあらわれた民衆の感情・感覚的世界には一貫したものがある。
⑬日本文学史のもう一つの社会学的特徴は、作家がその属する集団によく組みこまれ、かつその集団が外部に対して閉鎖的な傾向を持っていたことが挙げられる。そのことには二つの面がある。一つの面は支配階級の文化または支配体制全体への文学の組みこまれ(平安朝の文学–貴族社会、徳川期の文学–武士社会または町人社会)。
⑭二つ目の面は、支配階級からの逃避(鎌倉室町期の隠者文学–武士権力)。
⑮太平洋戦争以後の現代においても、大衆社会への作家の組み込まれ(風俗小説から三島由紀夫)と大衆社会の中で極端に疎外更田作家の小集団形成の傾向(多くの同人雑誌)が見られる。
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