金子みすゞ私的鑑賞 125. 紙ふうせん
金子みすゞ
紙ふうせん
一つ、ついては、手をたたく、
紙ふうせんののぼる空。
絹の旗雲、羽の雲、
柳のやうな、枝の雲。
「さんさん笹山」その唄の
猿もさんさん、笹山で、
お手々たたいて春の日を、
みなでたのしくあすぼうし、
ひとりあそびもお日和は、
ひとりあそびも春の日は。
『金子みすゞ全集』 Ⅱ 空のかあさま p253
4連10行
12、12。 12、12。 13 12、12、12、 12、12。
「紙ふうせん」という言葉を聞くとどこかしら郷愁を誘われます。
赤・白・黄・緑などの色が目に浮かびます。
平成以降に生まれた人は「紙ふうせん」と聞いてもピンとこないかもしれません。
つく際には紙が破れないように、しかもすぐ落ちてこないように、力加減に気を使います。
そこがゴム風船に比べ、遊びとしての要素が大きいと思います。
1891年に「紙手鞠」などの名称で流行したようなので、1903年生まれのみすゞさんの世代には玩具として定着していたと思われます。
その紙ふうせんをつくと、当然視線が上に向かいます。
つくことだけに集中してしまうと紙ふうせんしか見えませんが、みすゞさんには空の雲が見えてしまいます。
そこからさらにみすゞさんの思考は、紙ふうせんをついて落ちてくるまでに「手をたたく」動作から、同じ手をたたく「さんさん笹山」と唄いながら手をたたく遊びに移ります。
「さんさん笹山」という唄やそれを用いた遊びは私は知りません。
ネットで調べても該当する情報はヒットしませんでした。
ただ全集には註として以下の文が揚げられていることから、唄いながら手をたたく遊びと推測されます。
「さんさん笹山お猿が一匹手をたたく」一つ手を拍つ、
「さんさん笹山お猿が二匹手をたたく」二つ手を拍つ。
そしておそらくこの詩の主眼は、「旗雲」や「枝の雲」しかない晴れた春の日のみんなで遊び日和の日なのに、「みなでたのしく」遊ぶ「さんさん笹山」はしたくてもできない、「ひとりあそび」の紙ふうせんしかできない、一人でいる状況ではないでしょうか。
名詞: 一つ、 手(お手々)(2回)、 紙ふうせん、 空、 絹、 旗雲、 羽、 雲(2回)、 柳、 枝、 笹山(2回)、 唄、 猿、 春(2回)、 日(2回)、 みな、 ひとりあそび(2回)、 お日和
形容詞: たのしい
動詞: つく、 たたく(2回)、 のぼる、 あすぶ
通算登場回数
今回登場 (お)空(夕ぞら、青空、夜ぞら、夕やけ空):33作目 雲(雲間):11作目
今回登場なし (お)海(外海内海):24作目 母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):19作目 赤(赤い、あかい):19作目 青(青い、青む):18作目 白(白い、しろい、眞白な):16作目 (お)舟・小舟・船・帆かけ舟:15作目 お月さん(お月さま、月):10作目 (お)花:10作目 (お)星(さま):7作目 黒い:7作目 雪:6作目 波:6作目 (お)魚(さかな):5作目(タイトルのみ1作) (お)父さま(父さん):4作目 みどり(こみどり):4作目 お祖母さま:3作目 石ころ(石):3作目 紅い:2作目 紺:2作目 藍いろ:1作目 紫(むらさき):2作目 金:1作目 さくら:1作目
参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修 JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年
本日もご訪問いただきありがとうございました。

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一つ、ついては、手をたたく、
紙ふうせんののぼる空。
絹の旗雲、羽の雲、
柳のやうな、枝の雲。
「さんさん笹山」その唄の
猿もさんさん、笹山で、
お手々たたいて春の日を、
みなでたのしくあすぼうし、
ひとりあそびもお日和は、
ひとりあそびも春の日は。
『金子みすゞ全集』 Ⅱ 空のかあさま p253
4連10行
12、12。 12、12。 13 12、12、12、 12、12。
「紙ふうせん」という言葉を聞くとどこかしら郷愁を誘われます。
赤・白・黄・緑などの色が目に浮かびます。
平成以降に生まれた人は「紙ふうせん」と聞いてもピンとこないかもしれません。
つく際には紙が破れないように、しかもすぐ落ちてこないように、力加減に気を使います。
そこがゴム風船に比べ、遊びとしての要素が大きいと思います。
1891年に「紙手鞠」などの名称で流行したようなので、1903年生まれのみすゞさんの世代には玩具として定着していたと思われます。
その紙ふうせんをつくと、当然視線が上に向かいます。
つくことだけに集中してしまうと紙ふうせんしか見えませんが、みすゞさんには空の雲が見えてしまいます。
そこからさらにみすゞさんの思考は、紙ふうせんをついて落ちてくるまでに「手をたたく」動作から、同じ手をたたく「さんさん笹山」と唄いながら手をたたく遊びに移ります。
「さんさん笹山」という唄やそれを用いた遊びは私は知りません。
ネットで調べても該当する情報はヒットしませんでした。
ただ全集には註として以下の文が揚げられていることから、唄いながら手をたたく遊びと推測されます。
「さんさん笹山お猿が一匹手をたたく」一つ手を拍つ、
「さんさん笹山お猿が二匹手をたたく」二つ手を拍つ。
そしておそらくこの詩の主眼は、「旗雲」や「枝の雲」しかない晴れた春の日のみんなで遊び日和の日なのに、「みなでたのしく」遊ぶ「さんさん笹山」はしたくてもできない、「ひとりあそび」の紙ふうせんしかできない、一人でいる状況ではないでしょうか。
名詞: 一つ、 手(お手々)(2回)、 紙ふうせん、 空、 絹、 旗雲、 羽、 雲(2回)、 柳、 枝、 笹山(2回)、 唄、 猿、 春(2回)、 日(2回)、 みな、 ひとりあそび(2回)、 お日和
形容詞: たのしい
動詞: つく、 たたく(2回)、 のぼる、 あすぶ
通算登場回数
今回登場 (お)空(夕ぞら、青空、夜ぞら、夕やけ空):33作目 雲(雲間):11作目
今回登場なし (お)海(外海内海):24作目 母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):19作目 赤(赤い、あかい):19作目 青(青い、青む):18作目 白(白い、しろい、眞白な):16作目 (お)舟・小舟・船・帆かけ舟:15作目 お月さん(お月さま、月):10作目 (お)花:10作目 (お)星(さま):7作目 黒い:7作目 雪:6作目 波:6作目 (お)魚(さかな):5作目(タイトルのみ1作) (お)父さま(父さん):4作目 みどり(こみどり):4作目 お祖母さま:3作目 石ころ(石):3作目 紅い:2作目 紺:2作目 藍いろ:1作目 紫(むらさき):2作目 金:1作目 さくら:1作目
参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修 JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年
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