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金子みすゞ私的鑑賞  124. 蛙

金子みすゞ
01 /09 2023
蛙  

憎まれつ子、
憎まれつ子、
いつでも、かつでも、誰からも。

雨が降らなきや、草たちが、
「なんだ、蛙め、なまけて。」と、
それをおいらが知る事か。

雨が降り出しや子供らが、
「あいつ、鳴くから降るんだ。」と、
みんなで石をぶつつける。

それがかなしさ、口をしさ、
今度は降れ、降れ、降れ、となく。

なけばからりと晴れあがり、
馬鹿にしたよな、虹が出る。


『金子みすゞ全集』 Ⅲさみしい王女 pp272〜273


5連13行
5、5、13。 12、12、12。 12、12、12。 12、13。 12、12。


鳴いても鳴かなくてもどこかしらから非難を浴び、やけくそで鳴いたら期待とは異なる結果が生じた蛙を歌っています。

会社の中間管理職をはじめ、現代の社会の中にも同じような板挟み状態で「かなしさ、口をしさ」を感じている人は多いのではないでしょうか。

それでもそんなちょっと悲惨な状況を表現しながらも、「からり」「馬鹿にしたよな」「虹」といった言葉が、読む人を最後には少しだけ微笑ませます。

みすゞさんが詩を投稿していた大正時代の童謡全盛期の雰囲気を感じさせてくれる詩だと思います。

「蛙が鳴くと雨が降る」という言い伝えは明治・大正時代にはすでにあったことが分かります。

縄文・弥生時代のころから稲作を続けてきた日本人にとって、田植えの時期と重なる梅雨や蛙の繁殖期間とは強い因果関係を形成してきたことを改めて思い出させます。



名詞:   憎まれつこ(2回)、 いつ、 かつ、 誰、 雨(2回)、 草たち、 蛙、 おいら、 事、 子供ら、 あいつ、 石、 馬鹿

形容詞:  さみしい、 口をしい

動詞: 憎む(2回)、 降る(6回)、 なまける、 知る、 鳴く(なく)(3回)、 ぶつつける、 する、 出る


通算登場回数  
今回登場    石ころ(石):3作目
 
今回登場なし  (お)空(夕ぞら、青空、夜ぞら、夕やけ空):32作目   (お)海(外海内海):24作目   母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):19作目    赤(赤い、あかい):19作目   青(青い、青む):18作目    白(白い、しろい、眞白な):16作目    (お)舟・小舟・船・帆かけ舟:15作目  お月さん(お月さま、月):10作目    雲(雲間):10作目   (お)花:10作目   (お)星(さま):7作目    黒い:7作目   雪:6作目    波:6作目    (お)魚(さかな):5作目(タイトルのみ1作)    (お)父さま(父さん):4作目    みどり(こみどり):4作目    お祖母さま:3作目 紅い:2作目 紺:2作目   藍いろ:1作目   紫(むらさき):2作目   金:1作目   さくら:1作目  


参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年



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