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漱石・読んだふり 『野分』 十

漱石
10 /17 2021
漱石・読んだふり 『野分』 十


登場人物(登場順)
・白井道也

・白井道也の妻

・白井道也の兄



ストーリー
・白井道也と妻のやりとり(生活費が底をついていること、本の出版に目処が立たないこと)

・白井道也の妻の白井道也と結婚したことへに後悔の気持ち

・白井道也の兄が白井道也の妻を訪ね、道也を教師に戻すための計画を妻に伝える



語句
・嘉平治:嘉平次平の袴。

・鉄御納戸(てつおなんど):鉄色を帯びたおなんど色。 緑がかった鉄色。



白井道也の妻の結婚観と現状への感慨
・「今から考えて見ると嫁に来た時の覚悟が間違っている。自分が嫁に来たのは自分のために来たのである。夫のためと云う考はすこしも持たなかった。吾が身が幸福になりたいばかりに祝言の盃もした。父、母もそのつもりで高砂を聴いていたに違ない。思う事はみんなはずれた。この頃の模様を父、母に話したら定めし道也はけしからぬと怒るであろう。自分も腹の中では怒っている。」

・「道也は夫の世話をするのが女房の役だと済ましているらしい。それはこっちで云いたい事である。女は弱いもの、年の足らぬもの、したがって夫の世話を受くべきものである。夫を世話する以上に、夫から世話されるべきものである。だから夫に自分の云う通りになれと云う。夫はけっして聞き入れた事がない。家庭の生涯はむしろ女房の生涯である。道也は夫の生涯と心得ているらしい。それだから治まらない。世間の夫は皆道也のようなものかしらん。みんな道也のようだとすれば、この先結婚をする女はだんだん減るだろう。減らないところで見るとほかの旦那様は旦那様らしくしているに違ない。広い世界に自分一人がこんな思いをしているかと気がつくと生涯の不幸である。どうせ嫁に来たからには出る訳には行かぬ。しかし連れ添う夫がこんなでは、臨終まで本当の妻と云う心持ちが起らぬ。これはどうかせねばならぬ。どうにかして夫を自分の考え通りの夫にしなくては生きている甲斐がない。」





参考図書
『漱石全集』第四巻 岩波書店 1978年


日本大百科全書 小学館
世界大百科事典 平凡社
デジタル大辞泉 小学館
ブリタニカ国際大百科事典 ブリタニカ・ジャパン


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