巡回健診診察マニュアル 134 最近既往歴で見た疾患 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症
医療
心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症(Pulmonary atresia with intact ventricular septum : PA/IVS) 指定難病213
1.概念
心室中隔欠損を伴わず、肺動脈弁、肺動脈弁下、または肺動脈弁上で閉鎖している疾患。
重症肺動脈狭窄と同様に右室低形成を伴うことが多い(右室低形成症候群)。
生存には心房間交通が必須で右房血は左房へ迂回する。
肺血流は動脈管に依存している。
右室と冠動脈が交通している類洞交通を認めることがある。
類洞交通に伴って、冠動脈が狭窄したり途中で途絶していることがあり、その場合、冠動脈血流は高い右室圧に依存していることがある。
新生児心疾患の1~3%で、生後1週間以内発症の心疾患では10%を占める。
その他の心奇形や心外奇形の合併は少ない。
2.原因
先天異常。
原始心筒の心ループ成熟において、房室弁と洞部中隔が心房中隔と整列する過程の異常等、幾つかの心ループ成熟過程異常が考えられているが、その心臓発生異常の起因となる原因は不明。
3.症状
生後まもなくからチアノーゼが出現。
動脈管の自然閉鎖に伴いチアノーゼは増強する。
4.検査
・心エコー所見
純型肺動脈閉鎖では心エコーでは四腔断面で、左室はほぼ正常かやや大きく、右室は小さい。
肺動脈は細く、閉鎖状態は漏斗部閉鎖か弁性閉鎖となる。
肺血流は大動脈から動脈管を通してしか供給されず、その血流を認める。
心房中隔による心房間血流は必要で右左短絡となる。
・胸部X線
肺動脈が細く左側第2弓は陥凹。
Ebstein奇形を伴うと三尖弁逆流による右房拡大で心拡大を呈する。
・心電図
右軸偏位ないし正常軸で、左室肥大所見。
・心臓カテーテル ・造影検査
造影で、右室は小さく、肺動脈弁は閉鎖。
右室収縮期圧はほとんどの例で左室圧より高い。
右室造影で右室の形態と容積、類洞交通の有無と形態(右室依存性冠循環の診断)、三尖弁閉鎖不全の程度がわかる。
5.治療
・内科的治療
生直後はプロスタグランジンE1にて動脈管関存を維持する。
まれに心房間交通が不良で心不全が高度な場合に心房中隔裂開術BASが実施されることがある。
右室の解剖で治療方針が異なる。
一般的に右室は小さいことがほとんどである。
右室は小さいものの流入部、洞部、流出路がそろっていて、肺動脈弁が弁性閉鎖で、将来右室の大きさが正常化する可能性がある場合には、カテーテルにより、弁穿通術を施行し、その後肺動脈弁をバルーン拡大術する。
類洞交通と右室依存性冠循環が存在すれば、肺動脈弁拡大はできない。
・外科的治療
プロスタグランジンE1による動脈管関存維持が長期にわたる場合、新生児期に体肺短絡術を施行することがある。
右室が比較的大きい場合は右室流出路拡大術が行われることがある。
最終的には2心室修復かFontan型手術かone and half手術が行われる。
Fontan型手術やone and half手術は1歳以降に行われる。
右室が小さくて、将来の右室成長が見込めない場合や、右室流出路が筋性閉鎖の場合には、Fontan手術をめざす。
6.予後
病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々。
右心室の発育がよく冠動脈異常のないものでは、治療により血液循環は正常化し、正常児に近い発育発達が見込まれる。
冠動脈異常を伴うものでは、初期治療を乗り越えた後にも、胸痛、不整脈、狭心症のために、突然死を来しやすいといわれている。
右心室の発育が悪く、右心室を利用できない場合は、将来的にはFontan手術ができればチアノ-ゼのない状態で発育発達が可能。
参考サイト
・小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/04_32_040/
・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4483
・国立研究開発法人 国立循環器病院研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/pediatric_cardiovascular/tr18_pa-ivs/
本日もご訪問いただきありがとうございました。

備忘録・雑記ラン
1.概念
心室中隔欠損を伴わず、肺動脈弁、肺動脈弁下、または肺動脈弁上で閉鎖している疾患。
重症肺動脈狭窄と同様に右室低形成を伴うことが多い(右室低形成症候群)。
生存には心房間交通が必須で右房血は左房へ迂回する。
肺血流は動脈管に依存している。
右室と冠動脈が交通している類洞交通を認めることがある。
類洞交通に伴って、冠動脈が狭窄したり途中で途絶していることがあり、その場合、冠動脈血流は高い右室圧に依存していることがある。
新生児心疾患の1~3%で、生後1週間以内発症の心疾患では10%を占める。
その他の心奇形や心外奇形の合併は少ない。
2.原因
先天異常。
原始心筒の心ループ成熟において、房室弁と洞部中隔が心房中隔と整列する過程の異常等、幾つかの心ループ成熟過程異常が考えられているが、その心臓発生異常の起因となる原因は不明。
3.症状
生後まもなくからチアノーゼが出現。
動脈管の自然閉鎖に伴いチアノーゼは増強する。
4.検査
・心エコー所見
純型肺動脈閉鎖では心エコーでは四腔断面で、左室はほぼ正常かやや大きく、右室は小さい。
肺動脈は細く、閉鎖状態は漏斗部閉鎖か弁性閉鎖となる。
肺血流は大動脈から動脈管を通してしか供給されず、その血流を認める。
心房中隔による心房間血流は必要で右左短絡となる。
・胸部X線
肺動脈が細く左側第2弓は陥凹。
Ebstein奇形を伴うと三尖弁逆流による右房拡大で心拡大を呈する。
・心電図
右軸偏位ないし正常軸で、左室肥大所見。
・心臓カテーテル ・造影検査
造影で、右室は小さく、肺動脈弁は閉鎖。
右室収縮期圧はほとんどの例で左室圧より高い。
右室造影で右室の形態と容積、類洞交通の有無と形態(右室依存性冠循環の診断)、三尖弁閉鎖不全の程度がわかる。
5.治療
・内科的治療
生直後はプロスタグランジンE1にて動脈管関存を維持する。
まれに心房間交通が不良で心不全が高度な場合に心房中隔裂開術BASが実施されることがある。
右室の解剖で治療方針が異なる。
一般的に右室は小さいことがほとんどである。
右室は小さいものの流入部、洞部、流出路がそろっていて、肺動脈弁が弁性閉鎖で、将来右室の大きさが正常化する可能性がある場合には、カテーテルにより、弁穿通術を施行し、その後肺動脈弁をバルーン拡大術する。
類洞交通と右室依存性冠循環が存在すれば、肺動脈弁拡大はできない。
・外科的治療
プロスタグランジンE1による動脈管関存維持が長期にわたる場合、新生児期に体肺短絡術を施行することがある。
右室が比較的大きい場合は右室流出路拡大術が行われることがある。
最終的には2心室修復かFontan型手術かone and half手術が行われる。
Fontan型手術やone and half手術は1歳以降に行われる。
右室が小さくて、将来の右室成長が見込めない場合や、右室流出路が筋性閉鎖の場合には、Fontan手術をめざす。
6.予後
病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々。
右心室の発育がよく冠動脈異常のないものでは、治療により血液循環は正常化し、正常児に近い発育発達が見込まれる。
冠動脈異常を伴うものでは、初期治療を乗り越えた後にも、胸痛、不整脈、狭心症のために、突然死を来しやすいといわれている。
右心室の発育が悪く、右心室を利用できない場合は、将来的にはFontan手術ができればチアノ-ゼのない状態で発育発達が可能。
参考サイト
・小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/04_32_040/
・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4483
・国立研究開発法人 国立循環器病院研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/pediatric_cardiovascular/tr18_pa-ivs/
本日もご訪問いただきありがとうございました。

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