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金子みすゞ私的鑑賞  61. 魚市場

金子みすゞ
05 /21 2020
61. 魚市場


瀬戸に
渦まく
夕潮

とほく
とどろく
夕暗

市のひけた
市場に、
海からかげが
のぞくよ。

子供は、子供は、
どこにと、
何か、何か、
のぞくよ。

秋刀魚の色した
夕ぞら、
烏(からす)は啼かずに
わたるよ。



『金子みすゞ全集』Ⅲさみしい王女 p13


5連18行
3 4 4   3 4 4   6 4、 7 4。  8、4、6、4。  8 4、8 4。 


「市のひけた市場」の寂しさが、夕景を加えることで増幅されています。

前回の「浦の神輿」の祭りの後の寂しさに通じるものがあります。


最初の2連はそれぞれ一行にしてもいい音数で構成されています。

一行分の中に一連分の意味があるという意図でしょうか。

第一連は視覚、第二連は聴覚に訴えて夕景を描写しています。


「夕ぞら」に「烏」とくれば『夕焼小焼』が思い出されます。
『夕焼小焼』は中村雨紅によって1919年に作詩され、1923年に草川信が曲を付けたとされています。
みすゞさんが童謡雑誌に詩を投稿するようになったのが1923年ですが、各詩の創作年は不明ですので、この詩の創作時に『夕焼小焼』をみすゞさんが知っていたかはわかりません。


「秋刀魚の色」ではみすゞさんがどのような色をイメージしていたのでしょうか。


名詞:    瀬戸、 夕潮、 夕暗、 市、 市場、 海、 かけら、 子供(2回)、 どこ、 何(2回)、 秋刀魚、 色、 夕ぞら、 烏

形容詞:   とほい(2回)

動詞:  渦まく、 とどろく、 ひける、のぞく(2回)、 啼く、 わたる



通算登場回数  
今回登場    海(外海内海):19作目    (お)空(夕ぞら):16作目   
 
今回登場なし   赤(赤い):12作目   母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):12作目    青(青い):11作目     白(白い、眞白な):10作目    (お)舟・小舟・船:7作目      雲:6作目    花:6作目    波:5作目     (お)星:4作目     (お)父さま(父さん):3作目    雪:3作目   黒い:3作目   みどり(こみどり):3作目    石ころ(石):2作目 紅い:2作目 お月さん:1作目    藍いろ:1作目



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年




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金子みすゞ私的鑑賞  60. 浦の神輿

金子みすゞ
05 /09 2020
60. 浦の神輿


荒れるよ、波、波、人の波、
お神輿小舟は覆(かや)れそぢや。
やつさァやつさ、やつさァやつさ。

みるまに波、波、人の波、
となり町までさつと退く。
やつさァやつさ、やつさァやつさ。

あとには波、波、磯の波、
いつものやうに、すぐそこに。
じやんぶり、じやんぶり、じやんぶりこ。



『金子みすゞ全集』Ⅱ空のかあさま p89


3連9行
13、13。14。  13、12。14。  13、12。13。


港町の祭りの詩ですが、関心の中心は祭りの内容ではなく、祭りの最中の「人の波」と、祭りの後の日常的な「磯の波」の対比、言い換えれば動と静の対比です。

既に見た『雨の五穀祭』も思い出されます。

みすゞさんにとって祭りはその賑やかさゆえの、それが終わった後の寂しさが強調される存在なのかもしれません。

賑わいとの対比という意味では、みすゞさんの作品でも最もポピュラーな詩の一つである『大漁』にも通じるものがあります。




名詞:    波(9回)、 人(2回)、 お神輿、 小舟、 ま、 となり、 町、 あと、 いつも、 そこ

形容詞:   (-)

動詞: 荒れる、 覆る、 みる、 退く 



通算登場回数  
今回登場    (お)舟・小舟・船:7作目     波:5作目    
 
今回登場なし   海(外海内海):18作目    (お)空:15作目   赤(赤い):12作目   母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):12作目    青(青い):11作目     白(白い、眞白な):10作目    雲:6作目    花:6作目     (お)星:4作目     (お)父さま(父さん):3作目    雪:3作目   黒い:3作目   みどり(こみどり):3作目    石ころ(石):2作目 紅い:2作目  お月さん:1作目    藍いろ:1作目



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年




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金子みすゞ私的鑑賞  59. うらなひ

金子みすゞ
04 /27 2020
59. うらなひ


夕やけ、
小やけ、
赤い草履(ぞんぞ)
飛ばそ。

赤い草履
裏だ、
も一度
飛ばそ。


出るまで、
何べんでも
飛ばそ。

夕やけ、
小やけ、
雲まで
飛ばそ。


『金子みすゞ全集』Ⅲさみしい王女 p74


4連16行
4、3、6 3。  6 3、3 3。 3 4、6 3。 4、3、4 3。



3〜6文字の短い言葉で改行され、テンポの良い詩になっています。

すべての連が「飛ばそ。」で終わっているところも、意味・形どちらの点でもリズムを感じます。

下駄や草履を飛ばして明日の天気を占う遊びは、諸説あり、いつから頃始まったのかはっきりしないようですが、1900年代前半には定着していたことはこの詩で分かります。

そして、裏になれば表が出るまでやり直すことも、今も昔も変わらないようです。

そもそも子供が翌日の天気を気にすることが、遠足や運動会といった学校行事以外であったのでしょうか。

この遊びが学校制度が整う明治時代以前に定着していたのであれば、その当時の子供たちはどういったことに対して、翌日の天気が気になっていたのでしょうか。





名詞:   夕やけ(2回)、 小やけ(2回)、 草履(2回)、 裏、 も一度、 表、 何べん、 雲 

形容詞:  赤い(2回)

動詞: 飛ばす(4回)



通算登場回数  
今回登場    赤(赤い):12作目   
 
今回登場なし   海(外海内海):18作目    (お)空:15作目   母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):12作目    青(青い):11作目     白(白い、眞白な):10作目    (お)舟・船:6作目     雲:6作目    花:6作目     波:4作目    (お)星:4作目     (お)父さま(父さん):3作目    雪:3作目   黒い:3作目   みどり(こみどり):3作目    石ころ(石):2作目 紅い:2作目  お月さん:1作目    藍いろ:1作目



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年




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金子みすゞ私的鑑賞  58. 海を歩く母さま

金子みすゞ
04 /14 2020
58. 海を歩く母さま


母さま、いやよ、
そこ、海なのよ。
ほら、ここ、港、
この椅子、お舟、
これから出るの。
お舟に乗つてよ。

あら、あら、だァめ、
海んなか歩いちや、
あつぷあつぷしてよ。
母さま、ほんと、
笑つてないで、
はよ、はよ、乗つてよ。

とうとう行つちやつた。
でも、でも、いいの、
うちの母さま、えらいの、
海、あるけるの。
えェらいな、
えェらいな。


『金子みすゞ全集』Ⅲさみしい王女 p34


3連18行
7、7。7、7、7。8。  7、9、9。7、7、8。  9。7、11、7。5、5。


11作あるタイトルが「海」で始まる詩の最後になります。

32「椅子の上」同様、家の中を海に見立てた遊びの情景と思われます。

「椅子の上」では椅子を岩に見立てていましたが、この詩では椅子は「お舟」になっています。

そして「椅子の上」では声だけの登場だった「母さま」が海を歩ける「えらい」人として主役で登場です。

遊びの中では海である部屋も、遊びに参加していない「母さま」にとってはただの部屋なので、家事をする以上は歩き回ることになります。

海を笑いながら歩ける「母さま」は「えらい」ことになりますが、遊びに参加してくれない「母さま」は、やはりこの詩でも距離をおいた存在として描かれているように感じるのは、個人的な先入観のためでしょうか。




名詞:   母さま(3回)、 そこ、 海(3回)、 ここ、 港、 椅子、 お舟(2回)、 なか、 

形容詞:  えらい(えェらい)(3回)

動詞: 出る、 乗る(2回)、 歩く(あるく)(2回)、 する、 笑う、 行く



通算登場回数  
今回登場    海(外海内海):18作目    母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):12作目  
 
今回登場なし   (お)空:15作目    赤(赤い):11作目   青(青い):11作目     白(白い、眞白な):10作目    (お)舟・船:6作目     雲:6作目    花:6作目     波:4作目    (お)星:4作目     (お)父さま(父さん):3作目    雪:3作目   黒い:3作目   みどり(こみどり):3作目    石ころ(石):2作目 紅い:2作目  お月さん:1作目    藍いろ:1作目



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
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金子みすゞ私的鑑賞  57. 唄

金子みすゞ
04 /03 2020
57. 唄


お風邪なほつて
表へ出たら
みんな袖無着てました。

みんなで唄ふ
唄きけば
「ほうい、ほうい、ほうれん坊。」

知らぬその唄
ききながら
ふところ手して山見れば、
山は紅葉になりました。



『金子みすゞ全集』Ⅲさみしい王女 p208


3連10行
7 7 12。  7 5 12。  7 5 12、12。



前作同様、拾い出しで見落とし、本来なら44番目に取り上げるべき詩でした。

袖無しは袖無し羽織のことで、冬の季語になっています。

風邪をひいて学校も休み、久しぶりに家の外に出てみたら、季節が進んでいたことを歌っています。

近くの人の服の変化に加え、遠くの山の色の変化を織り混ぜる視点の広がりが、この詩でも見られます。

みんなが唄う自分の知らない唄が、学校を休んでいた時間の流れを感じさせ、それが季節の移ろいを感じることへとつながるところに、この詩のタイトルを「唄」とした理由がうかがえます。




名詞:   お風邪、 表、 袖無、 唄(2回)、 ふところ手、 ほうれん坊、 山(2回)、 紅葉

形容詞:  (ー)

動詞: なほる、 出る、 着る、 唄ふ、 きく(2回)、 知る、 する、 見る、 なる



通算登場回数  
今回登場    (-)
 
今回登場なし    海(外海内海):17作目    (お)空:15作目    赤(赤い):11作目   青(青い):11作目    母さん(お母さま、母さま、かあさん、かあさま):11作目   白(白い、眞白な):10作目    (お)舟・船:6作目     雲:6作目    花:6作目     波:4作目    (お)星:4作目     (お)父さま(父さん):3作目    雪:3作目   黒い:3作目   みどり(こみどり):3作目    石ころ(石):2作目 紅い:2作目  お月さん:1作目    藍いろ:1作目



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年




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