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金子みすゞ私的鑑賞 34. 一番星

金子みすゞ
08 /17 2019
34. 一番星



ひばりが空で
一番星みィつけた。

船頭(せんど)の子が海で
一番星みィつけた。

支那の子が支那で
一番星みィつけた。

たァれが長者に
なァる。

知つてゐるものは
一番星ばかり。



『金子みすゞ全集』Ⅱ空のかあさま p271


5連10行(2行 2行  2行  2行  2行)

7 11。  8 11。  8 11。  8 3。  8 9。



「ひばり」、「船頭の子」、「支那の子」、動物の種類が違っても、親の職業が違っても、親の国籍が違っても、「一番星」は平等に見つけることができます。

立場の違いに関わらず機会は平等にあるという、みすゞさんの基本的な考えが読み取れます。

しかし、「長者」になれるのを知っているのは一番星だけであり、機会は平等でも結果は平等ではありません。

それも受け入れることができるのが、世の中に多数存在する偽善的で頑なな平等主義者とみすゞさんの違いです。

ところで、当時一番星を見つけると長者になるという言い伝えがあったのでしょうか。

浅田美代子さんの歌に「しあわせの一番星」というものがありましたが。






名詞: ひばり、 空、 一番星(4回)、 船頭の子、 海、 支那の子、 支那、 長者、 もの

形容詞: 0

動詞: みィつける(3回)、 なァる、 知る、 ゐる、  



通算登場回数  
今回登場        (お)空:11作目     海:5作目     
今回登場なし    母さん(お母さま、かあさん、かあさま):8作目   赤(赤い):7作目    青(青い):6作目     白(白い):5作目    雲:5作目    花:4作目    波:2作目     (お)星:2作目     (お)父さま:2作目     (お)舟・船:2作目     石ころ(石):2作目     雪:1作目    お月さん:1作目



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年


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金子みすゞ私的鑑賞 33. 忙しい空

金子みすゞ
08 /09 2019
33. 忙しい空


今夜はお空がいそがしい、
雲がどんどと駈けてゆく。

半かけお月さんとぶつかつて、
それでも知らずに駈けてゆく。

子雲がうろうろ、邪魔つけだ、
あとから大雲、おつかける。

半かけお月さんも雲のなか、
すりぬけ、すりぬけ、駈けてゆく。

今夜はお空がいそがしい、
ほんとに、ほんとに、忙しい。



『金子みすゞ全集』Ⅰ美しい町 p76


5連10行(2行 2行  2行  2行  2行)

13、12。  12、13。  13、13。  13、13。  13、13。



上空の風が強く、雲が次々と流れて行く様を、「お空がいそがしい」と表現する感性が素敵です。

言われてみればそうだなと思えますが、その表現を見つけ出すのがセンスだと思います。

前半は雲の動きをメインに、後半は立場をかえて月が相対的に動いて見えることが表現されます。

異なる視点で物事を捉えることも、みすゞさんの詩に頻繁に見られる手法です。




名詞:  今夜(2回)、 お空 (2回) 、 雲(2回)、 半かけ(2回)、 お月さん(2回)、 子雲、 大雲

形容詞: いそがしい(忙しい)(3回)

動詞: 駆ける(2回)、 ゆく(3回)、 ぶつかる、 知る、 おつかける、 すりぬける、  



通算登場回数  
今回登場        (お)空:10作目     お月さん:1作目
今回登場なし    母さん(お母さま、かあさん、かあさま):8作目   赤(赤い):7作目    青(青い):6作目     白(白い):5作目    雲:5作目    海:4作目     花:4作目    波:2作目     (お)星:2作目     (お)父さま:2作目     (お)舟・船:2作目     石ころ(石):2作目     雪:1作目   


参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
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金子みすゞ私的鑑賞 32. 椅子の上

金子みすゞ
08 /01 2019
32. 椅子の上


岩の上、
まはりは海よ、
潮はみちる。

おおい、おおい、
沖の帆かげ。
呼んでも、なほ、
とほく、とほく。

日はくれる、
空はたかい、
潮はみちる……。
  (もういいよ、ごはんだよ。)
あ、かあさんだ。
椅子の岩から
ゐせいよく、
お部屋の海に
とびおりる。



『金子みすゞ全集』Ⅱ 空のかあさま p179


3連16行(3行 4行  9行)

5、 7、 6。 6、 6、 6、 6。 5、 6、 6。 10。 6。 7 5、 7 5。


部屋を海に見立て、畳の上に腹ばいになり泳ぐ真似をしたことがある人も多いと思います。

この詩では、さらに椅子を海の上に出た岩場に見たてて遊んでいます。

しかも、「日はくれ」「潮は満ち」てきて、呼んでも聞こえない程遠くに帆掛け船が通るだけで、心細さがつのります。

そこに聞こえてくるのが「ごはんだよ」と言う「かあさん」の声。

この声で一瞬にして海はもとの部屋に戻って、もう椅子の岩から「とびおり」ても溺れることはありません。

遊びの終わりです。



みすゞさんの詩では、1行が5音・7音・12音であることが多いのですが、この詩は半数が6音で構成されています。



名詞:  岩(2回) 上 まはり 海 (2回) 沖 帆かげ 日 空 潮 ごはん かあさん 椅子 ゐせい お部屋

形容詞: とほい たかい いい よい

動詞: みちる 呼ぶ くれる みちる とびおりる  



通算登場回数  
今回登場        (お)空:9作目 母さん(お母さま、かあさん、かあさま):8作目 海:4作目
今回登場なし    赤(赤い):7作目  青(青い):6作目 白(白い):5作目    雲:5作目   花:4作目  波:2作目 (お)星:2作目 (お)父さま:2作目   (お)舟・船:2作目 石ころ(石):2作目 雪:1作目   


参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年


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金子みすゞ私的鑑賞 31. 石と種

金子みすゞ
07 /24 2019
31. 石と種



石ころは
街道(かいど)の土にうもれてた。

菜の種は
畠の土にうもれてた。

街道に
畠に
雨がふり、
街道に
畠に
日が照つた。

畠の土から、芽が出たら、
お百姓さんがよろこんだ。
街道に石がのぞいたら、
乞食の子供がつまづいた。


『金子みすゞ全集』Ⅱ 空のかあさま p204


4連14行(2行 2行  6行  4行)

5 12。  5  12。   4  4  5、 4  4  5。   13、 12。 12、 13。


土にうもれた石が子供をつまづかせるという情景は前回の「石ころ」と似ています。

違うのは、「菜の種」という対照物が登場していることです。

花が咲いて人の目を楽しませ、菜種油も取れて人に役立つ「菜の種」と、子供をつまづかせるだけの役に立たない「石ころ」。

役に立つものと役に立たないものの対比は、みすゞさんの詩にはよく見られます。

その例としては「土」、「芝草」などが思い出されます。




こツつんこツつん
打たれる土は
よい畠になつて
よい麥生むよ。

朝から晩まで
踏まれる土は
よい路になつて
車を通すよ。

打たれぬ士は
踏まれぬ土は
要らない土か。

いえいえそれは
名のない草の
お宿をするよ。


芝草

名は芝草というけれど、
その名をよんだことはない。

... それはほんとにつまらない、
みじかいくせにそこら中、
みちの上まではみ出して、
力いっぱいりきんでも、
とても抜けないつよい草。

れんげは紅い花が咲く、
すみれは葉までやさしいよ。
かんざし草はかんざしに、
京びななんかは笛になる。

けれどももしか原っぱが、
そんな草たちばかしなら、
あそびつかれたわたし等は、
どこえ腰かけ、どこえ寝よう。

青い、丈夫な、やわらかな、
たのしいねどこよ、芝草よ。

                  
しかし、「土」でも「芝草」でも、役に立たないものとして登場した「打たれぬ」「踏まれぬ」「土」、「芝草」も、実は「名もない草のお宿」をしたり、「わたし等」が「腰かけ」たり「寝」たりするのに役に立ちます。

「石ころ」は結局何の役にも立ちません。

それでも「石ころ」はこの詩の主役です。

役に立たないものは人間にとって役に立たないだけです。

人間に見向きもされないものがいとおしく思われる、そんなみすゞさんの感覚が私たちの不意を突きます。



名詞:  石ころ(石)(2回)  街道(4回)  土(3回)  菜の種  畠(4回)  雨  日  芽  お百姓さん  乞食  子供

形容詞: 0

動詞: うもれる(2回)  ふる  照る  出る  よろこぶ  のぞく  つまづく  



通算登場回数  
今回登場        石ころ(石):2作目
今回登場なし    (お)空:8作目 赤(赤い):7作目    母さん(お母さま、かあさん、かあさま):7作目 青(青い):6作目 白(白い):5作目    雲:5作目    花:4作目  海:3作目 波:2作目 (お)星:2作目 (お)父さま:2作目   (お)舟・船:2作目 雪:1作目   


参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
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金子みすゞ私的鑑賞 30. 石ころ

金子みすゞ
07 /16 2019
30. 石ころ



きのふは子供を
ころばせて
けふはお馬を
つまづかす。
あしたは誰が
とほるやら。

田舎のみちの
石ころは
赤い夕日に
けろりかん。

『金子みすゞ全集』Ⅰ美しい町 p134


2連10行(6行 4行)

8 5 7 5。 7 5 7 5 7 5。



「田舎のみちの石ころ」は、「子供をころばせ」ようとも、「お馬をつまづか」せようとも思っていません。

何の因果かたまたまそこにいることになっただけです。

周りが勝手にころび、つまづいていくだけです。

そして、時には睨まれたり蹴り返されたりするかもしれません。

私たちの日々の生活の中でも、自分は意図していないのに、周りが勝手に勘違いして不当な非難・言いがかりを受けることがあります。

そんな時には、この石ころを思い出し、「けろりかん」としていることが肝要です。


本作は2連構成ですが、各連の行数が異なっています。

本作では句点が使われていません。



名詞:  きのふ  子供  けふ  お馬  あした  誰  田舎  みち  石ころ  夕日

形容詞: 赤い

動詞: ころぶ  つまづく  とほる  



通算登場回数  
今回登場       赤(赤い):7作目  石ころ:1作目
今回登場なし    (お)空:8作目 母さん(お母さま、かあさん、かあさま):7作目 青(青い):6作目 白(白い):5作目    雲:5作目    花:4作目  海:3作目 波:2作目 (お)星:2作目 (お)父さま:2作目   (お)舟・船:2作目 雪:1作目   



参考書籍
『新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 JULA出版局 1984年
『童謡詩人金子みすゞの生涯』 矢崎節夫 著 JULA出版局 1993年
『別冊太陽 生誕100年記念 金子みすゞ』 平凡社 2003年
『没後80年 金子みすゞ ~みんなちがって、みんないい。』 矢崎節夫 監修  JULA出版局 2010年
『金子みすゞ 魂の詩人』 増補新版 KAWADE夢ムック 文藝別冊 河出書房新社 2011年
『永遠の詩1 金子みすゞ』 矢崎説夫 選・鑑賞 小学館eBooks 2012年
『金子みすゞ作品鑑賞事典』 詩と詩論研究会編 勉誠出版 2014年


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