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下の句50音順にたどる百人一首 No.64 ひとの

百人一首
08 /20 2019
No.64(No38)
下の句
ひとの・いのちのをしくもあるかな
(人の命の 惜しくもあるかな)

上の句
わすら・るるみをばおもはずちかひてし
(忘らるる 身をば思わず 誓ひてし)


意味
忘れられる私のことはいいのです。ただ、神に誓ったあなたの命が惜しまれてならないのです。


出典
『拾遺集』巻14恋4・870
「題知らず」


作者
右近
生没年不詳 平安中期の歌人
藤原季縄(すえただ)の娘。季縄が右近少将だったためこの名がある。
醍醐天皇の皇后穏子の女房。


備考
・「思はず」の「ず」を終止形ととり、二句切れとするか、連用形ととり、三句切れとするかで意味がかわる。前者では男に捨てられた女の、それでも相手を案じる意味になり、後者では捨てられることも知らなかった女の、相手に対する同情に事寄せた皮肉となる。

・「て」は完了の助動詞の連用形。「し」は過去の助動詞の連体形。

・「人」は相手の男。

・「惜しく」は、「相手の男が誓いを破った結果として、神仏の罰を被るに違いない、それが惜しく思われる」の意。

・『大和物語』に「男の忘れじとよろづのことをかけて誓ひけれど、忘れにけるのちに言ひやりける」の詞書でこの歌があり、それによれば「人」は藤原敦忠のことになる。



参考書籍
『百人一首一夕話 上・下』 尾崎雅嘉著 岩波文庫
『ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首』 大岡信著 世界文化社
『別冊太陽 百人一首への招待』 吉海直人監修 平凡社
『解説 百人一首』 橋本武著 ちくま学芸文庫


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下の句50音順にたどる百人一首 No.63 ひとには

百人一首
08 /12 2019
No.63(No11)
下の句
ひとには・つげよあまのつりぶね
(人には告げよ あまの釣り舟)

上の句
わたのはらや・そしまかけてこぎいでぬと
(わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと)


意味
広々とした海原を多くの島を経めぐって流罪の地へ向かうため舟を漕ぎ出したと、京に残してきた人に告げておくれ、漁夫の釣り舟よ。


出典
『古今集』巻9羇旅・407
「隠岐の国に流されける時に、舟に乗りて出で立つとて、京なる人のもとにつかはしける」


作者
参議篁(小野篁)
802~852 平安初期の学者・漢詩人
838年遣唐副使に任ぜられたが、乗船する船をめぐって藤原常嗣と争い、病気と称して乗船せず、西道謡という詩を作って遣唐使のことを風刺したため、隠岐に流罪となった。2年後文才を惜しまれ都へ召喚され、後参議に至る。


備考
・「わた」は「海」のこと。「わたつみ」と類語。

・「八十」は数の多いことをいう。

・「かけて」は目的地に到着するまで島々のそばを通り抜けて行くことをいったもの。

・「人」は詞書から、京に残してきた肉親または恋人のこと。

・「あま」は「漁夫」の意。



参考書籍
『百人一首一夕話 上・下』 尾崎雅嘉著 岩波文庫
『ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首』 大岡信著 世界文化社
『別冊太陽 百人一首への招待』 吉海直人監修 平凡社
『解説 百人一首』 橋本武著 ちくま学芸文庫


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下の句50音順にたどる百人一首 No.62 ひとにし

百人一首
08 /04 2019
No.62(No25)
下の句
ひとにし・られでくるよしもがな
(人に知られで くるよしもがな)

上の句
なにし・をはばあうさかやまのさねかづら
(名にし負わば 逢坂山の さねかづら)


意味
逢坂山のさねかづらが、その名の通り逢って寝ることができるというのなら、あなたを手繰り寄せるように人に知られず逢いに行く方法があればいいのに。


出典
『後撰集』巻11恋3・700
「女につかはしける」


作者
三条右大臣(藤原定方)
873~932 平安前期の公卿
藤原高藤の息子、藤原朝忠の父。
醍醐天皇の外戚となったが、政権には関心を示さず、文化人として活動した。
京の三条に居を構えていたためこの名がある。


備考
・「名に負う」は「名に相応した実質をともなっている」の意。「「し」は強意の副助詞。「名にし負はば」で「その名のとおりであるならば」の意。

・「逢坂山」は山城国(現在の京都府)と近江国(現在の滋賀県)の国境にあった山。歌枕。「逢う」との掛詞。

・「さねかづら」はモクレン科の多年生蔓草。つるを取るのに手繰り寄せることから「くる」にかかる枕詞。「さ寝(「さ」は接頭語)」との掛詞で、「逢う」の縁語。

・「くる」は「来る」と「繰る」を掛けたもの。「さねかづら」の縁語。「来る」は平安時代の男女関係の意味としては、男が女のもとに「行く」の意。

・「よし」は「方法、手だて」の意。「もがな」は願望の意の終助詞。




参考書籍
『百人一首一夕話 上・下』 尾崎雅嘉著 岩波文庫
『ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首』 大岡信著 世界文化社
『別冊太陽 百人一首への招待』 吉海直人監修 平凡社
『解説 百人一首』 橋本武著 ちくま学芸文庫


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下の句50音順にたどる百人一首 No.61 ひとづ

百人一首
07 /27 2019
No.61(No63)
下の句
ひとづ・てならでいふよしもがな
(人づてならで 言ふよしもがな)

上の句
いまは・ただおもひたえなむとばかりを
(今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを)


意味
恋路をせき止められた今となってはもう、あなたとの恋は思い切ってあきらめましょう。そういう私の思いを、人づてではなく直接お会いしてあなたにお伝えするすべがあればいいなあと、切に思っています。


出典
『後拾遺集』巻13恋3・750
「伊勢の斎宮わたりよりまかり上りて侍りける人に忍びて通ひける事をおほやけもきこしめして、守り女などつけさせ給ひて忍びにも通はずなりにければよみ侍りける」


作者
左京大夫雅道(藤原雅道)
992~1054 平安中・後期の公卿・歌人
中関白家伊周の息子。儀同三司母高階貴子は祖母にあたる。
父伊周の失脚で出世の望みを絶たれる。


備考
・「今はただ」は「今となってはもう」の意。

・「「思ひ絶え」は「思い切る」の意。

・「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形。「む」は意志の助動詞の終止形。

・「なら」は断定の助動詞「なり」の未然形。「で」は打消しの接続助詞。「人づてならで」で「人を介しての言葉ではなく、自分自ら直接に」の意。

・「よし」は「方法、手だて」の意。「もがな」は願望の意の終助詞。

・道雅と三条天皇の皇女、当子内親王との悲恋を嘆いた歌。事情は『栄華物語』の「玉のむらぎく」「ゆふしで」に語られている。

・藤原敦忠の「いかにしてかく思ふてふことわだに人づてならで君に語らむ」を本歌としている。



参考書籍
『百人一首一夕話 上・下』 尾崎雅嘉著 岩波文庫
『ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首』 大岡信著 世界文化社
『別冊太陽 百人一首への招待』 吉海直人監修 平凡社
『解説 百人一首』 橋本武著 ちくま学芸文庫


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下の句50音順にたどる百人一首 No.60 ひとし

百人一首
07 /19 2019
No.60(No41)
下の句
ひとし・れずこそおもひそめしか
(人知れずこそ 思ひそめしか)

上の句
こひ・すてふわがなはまだきたちにけり
(恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり)


意味
私が恋をしているという噂が早くも世間に広まってしまいました。人に知られないようにあれだけ用心して思い始めたのになあ。


出典
『拾遺集』巻11恋1・621
「天暦の御時の歌合」


作者
壬生忠見
生没年不詳 平安中期の歌人
壬生忠岑の息子。
三十六歌仙の一人。


備考
・「恋すてふ」は「恋しているという」の意。

・「名」はここでは「浮き名、情事のうわさ・評判」

・「まだき」は「もう、早くも」の意。ここでは「まだ恋愛の実質が伴っていないうちにもう」の意。

・「しか」は過去の助動詞「き」の已然形。

・40番の平兼盛の歌「忍ぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」と歌合せで番わされ、負けとなった。しかし、藤原清輔の歌学書『奥義抄』において、兼盛の歌に盗作の疑いがかけられては、忠見の歌を評価する声の方が高くなっている。

・この歌合せの敗北で、忠見は鬱病で死んだという伝説が生じた。



参考書籍
『百人一首一夕話 上・下』 尾崎雅嘉著 岩波文庫
『ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首』 大岡信著 世界文化社
『別冊太陽 百人一首への招待』 吉海直人監修 平凡社
『解説 百人一首』 橋本武著 ちくま学芸文庫


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