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『日本文学史序説』Paragraph Briefings 民話と民謡①

加藤周一
09 /07 2023
民話と民謡

①『風土記』と「古代民謡」は奈良朝以前の地方の大衆の感情生活を知るうえでの重要な資料である。

②『風土記』は八世紀の前半に中央政府の命令(713)によって編纂された全国の地方誌で、シナ語で書かれ、各地方の地名とその由来、産物と耕作地の状態、古老相伝の「旧聞異事」を内容としていた。『風土記』のなかで今日まで比較的完全な形で伝っているのは、『播磨国風土記』、『常陸国風土記』、『出雲国風土記』であり、部分的に残っているのが、『肥前』『豊後』の二巻である。

③『風土記』を見る限り、当時の地方信仰は『記』・『紀』とは対照的に組織化されていないことがわかる。

④『常陸国風土記』のなかにある三つお降臨神話から、当時の地方には天から降ってきた祖先神あるいは祟りの神のはなしが多数存在していたであろうことが想像できる。

⑤神々と係らない世俗的な伝説や民話は地名の由来を説明するものが多いが、そこには儒・仏の影響はほとんどない。



使用書籍
・『加藤周一著作集』巻4・巻5 平凡社 1979年



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『夕陽妄語』を読むために 「北京の秋再び」

加藤周一
09 /06 2023
「北京の秋再び」  2002.10.28

・朱鎔基(1928〜):中国の政治家。1957年からの反右派闘争で批判され、1978年名誉回復。国家経済委員会局長、清華大学教授などをへて1987年共産党中央委員候補。翌年上海市長、1989年同市党委員会書記を兼任し、浦東新区の経済開発を指導。柔軟な発想により「中国のゴルバチョフ」と西側で評された。1991年副首相に昇格。国営企業の連鎖債務問題を扱い、のち中国人民銀行総裁を兼務。1998年首相となり江沢民政権を支えたが、2003年3月の全人代で温家宝に首相の座を譲る。



参考書籍
日本大百科全書 小学館
世界大百科事典 平凡社
デジタル大辞泉 小学館
ブリタニカ国際大百科事典 ブリタニカ・ジャパン
精選版 日本国語大辞典


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『日本文学史序説』Paragraph Briefings 『古事記』および『日本書紀』④

加藤周一
08 /24 2023
⑯北方アジア大陸および南方海洋民族の神話から影響され、祖先神として『記』・『紀』に叙述される神々は、絶対者的性格は持たず、共同体の過去の投影であり、人間社会の延長であり、「人間的」である。

⑰『記』・『紀』には農民の間に伝承されたと推定される故郷や恋人への思いをつづる歌謡が、神々や天皇や貴族たちの劇的な物語の主人公の作として数多く挿入されている。

⑱東征のヤマトタケルノミコトを海神の怒りから救ったオトタチバナヒメが詠んだとされる歌は、その典型的なものと考えられる。

⑲『記』に記されるヤマトタケルノミコトは『紀』に記されるそれより、より人間的であり農民の歌がより適合する。

⑳『古事記』のもっとも美しく感動的な部分は、ほとんどすべて恋の話である。此岸的な世界構造のなかで、感情生活の極致にあらわれるものは、移ろいやすい人間感情(恋)の永遠化であり、その意味で『古事記』の最も白眉の部分は極めて此岸的である。



使用書籍
・『加藤周一著作集』巻4・巻5 平凡社 1979年



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『夕陽妄語』を読むために 「喪失の劇」

加藤周一
08 /23 2023
「喪失の劇」 2002.9.24

・ベルリーナ・アンサンブル:ドイツの劇団。 B.ブレヒトとその夫人 H.ワイゲルによって 1949年創設された。1954年以降シッフバウアーダムの劇場を本拠とし、特にブレヒト作品の上演で知られる。

・『リチャード二世』:ウィリアム・シェイクスピア作の歴史劇。リチャード二世の生涯に基づくもので、シェイクスピアの第2四部作(『リチャード二世』『ヘンリー四世 第1部』『ヘンリー四世 第2部』『ヘンリー五世』)の1作目にあたる。

・『コリオラーン』:古代ローマの英雄コリオラヌスを主人公にした戯曲。作者は作家のハインリヒ・ヨーゼフ・フォン・コリン。

・ヘレーネ・ヴァイゲル(Helene Weigel 1900〜1971):オーストリア出身のドイツ(東ドイツ)の女優。劇作家ブレヒトの妻。

・シェークスピア:既出(「嘘の効用」http://selfdevelopment578.blog.fc2.com/blog-entry-418.html)

・ジェラール・フィリップ(Gérard Philipe 1922〜1959):フランスの俳優。愛称はファンファン(Fanfan)。また、フランスのジェームズ・ディーンとも呼ばれている。

・イヨネスコ:既出(「東欧紀行」http://selfdevelopment578.blog.fc2.com/blog-entry-377.html)



参考書籍
日本大百科全書 小学館
世界大百科事典 平凡社
デジタル大辞泉 小学館
ブリタニカ国際大百科事典 ブリタニカ・ジャパン
精選版 日本国語大辞典


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『日本文学史序説』Paragraph Briefings 『古事記』および『日本書紀』③

加藤周一
08 /10 2023
⑪『古事記』の「国ゆづり」は『出雲風土記』の内容とくいちがう。

⑫「国ゆづり」の後は大和系のアマテラスの子孫が大和朝廷を治めることとなり、出雲系の神の出る余地はなかった。

⑬このような『古事記』のすじ書きは、知的水準の高い編者によって、はっきりした目的意識に基づいて編纂されたことは明らかで、その意味で、『記』『紀』の神話は、大衆の中に生きていたほんとうの神話ではなくて、支配層の創作した神話文学である。

⑭『記』・『紀』の目的、意識された目的により決定された枠組、年代順の叙述の体裁と話を一貫するおよそのすじ道は、上流知識層が消化した大陸文化の結果である。その目的に関係なく、部分的挿話を全体の均衡から離れて詳しく語り、いよいよその細部の叙述に入ってゆく側面は、上流知識層のなかにも生きていた大衆の心である。

⑮前節の具体的例の一つとしてオホザサキノミコト(仁徳天皇)の話を挙げることができる。その話の目的は大陸思想の直接の影響のもとで「聖帝」の一章を設けることであり、その叙述内容は「聖帝」の「聖」なる所以を説明する逸話は少なく、全く関係のない私的挿話に重点が置かれ、しかも描写に優れている。



使用書籍
・『加藤周一著作集』巻4・巻5 平凡社 1979年



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