巡回健診診察マニュアル 146.最近既往歴で見た疾患 高安動脈炎
医療
高安動脈炎 (Takayasu arteritis:TA)
1.概念
・大動脈及びその主要分枝や肺動脈、冠動脈に炎症性壁肥厚をきたし、またその結果として狭窄、閉塞または拡張病変を来す原因不明の非特異的大型血管炎。
・狭窄または閉塞を来した動脈の支配臓器に特有の虚血障害、あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす。
・病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する。
・全身の諸臓器に多彩な病変を合併する。
・10代後半から30代までの若い女性に好発する。男女比は1:8。
・これまで高安動脈炎(大動脈炎症候群)とされていたが国際分類に沿って、高安動脈炎と統一した。また、橈骨動脈脈拍の消失がよく見られるため、脈無し病とも呼ばれている。
・病名は、1908年に本疾患を発見した金沢大学眼科の高安右人博士の名に由来する。
2.原因
・不明
・何らかのウイルスなどの感染が本症の引き金になっている可能性がある。それに引き続いて、自己免疫的な機序により血管炎が進展すると考えられている。
・特定のHLAとの関連や疾患感受性遺伝子(SNP)も見つかっており、発症には体質的な因子が関係していると考えられる。
3.症状
・病初期より微熱又は高熱や全身倦怠感が数週間や数か月続く。そのため不明熱の鑑別のなかで本症が診断されることが多い。
・臨床症状のうち、最も高頻度に認められるのは、上肢乏血症状。特に左上肢の脈なし、冷感、血圧低値を認めることが多い。上肢の挙上(洗髪、洗濯物干し)に困難を訴える女性が多い。
・頸部痛、上方視での脳虚血症状は本症に特有。
・本症の一部に認められる大動脈弁閉鎖不全症は本症の予後に大きな影響を与える。
・頻度は少ないが、冠動脈に狭窄病変を生じることがあり、狭心症・急性心筋梗塞を生じる場合もある。
・頸動脈病変による脳梗塞も生じうる。
・本邦の高安動脈炎は大動脈弓周囲に血管病変を生じることが多い。
・下肢血管病変は腹部大動脈や総腸骨動脈などの狭窄により生じ、間欠性跛行などの下肢乏血症状を呈する。
・10%程度に炎症性腸疾患を合併し、下血や腹痛を主訴とする。
4.診断
・血液検査による炎症反応の上昇と超音波、造影CT、MRI、PET-CTや血管造影検査により血管の狭窄、拡張および血管の壁が厚くなっていることを確認することで診断。
5.治療
・内科療法は炎症の抑制を目的として副腎皮質ステロイドが使われる。症状や検査所見の安定が続けば漸減を開始する。漸減中に、約7割が再燃するとの報告がある。
・再燃の場合は免疫抑制薬またはトシリズマブ皮下注の併用を検討する。
・血栓性合併症を生じるため、抗血小板剤、抗凝固剤が併用される。
・外科療法は特定の血管病変に起因する虚血症状が明らかで、内科的治療が困難と考えられる症例に適用される。炎症が沈静化してからの手術が望ましい。外科的治療の対象になる症例は全体の約20%。
6.予後
・早期発見の場合、治療も早期に行われるため予後が著しく改善し、多くの症例で長期の生存が可能になりQOLも向上してきている。
・予後を決定するもっとも重要な病変は、腎動脈狭窄や大動脈縮窄症による高血圧、大動脈弁閉鎖不全によるうっ血性心不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、動脈瘤破裂、脳梗塞のため、早期からの適切な内科治療と重症例に対する適切な外科治療、血管内治療によって長期予後の改善が期待できる。
参考サイト
・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/290
・国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/takayasu_arteritis/
・日本リウマチ学会
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/takayasudomyakuen/
本日もご訪問いただきありがとうございました。

備忘録・雑記ラン
1.概念
・大動脈及びその主要分枝や肺動脈、冠動脈に炎症性壁肥厚をきたし、またその結果として狭窄、閉塞または拡張病変を来す原因不明の非特異的大型血管炎。
・狭窄または閉塞を来した動脈の支配臓器に特有の虚血障害、あるいは逆に拡張病変による動脈瘤がその臨床病態の中心をなす。
・病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する。
・全身の諸臓器に多彩な病変を合併する。
・10代後半から30代までの若い女性に好発する。男女比は1:8。
・これまで高安動脈炎(大動脈炎症候群)とされていたが国際分類に沿って、高安動脈炎と統一した。また、橈骨動脈脈拍の消失がよく見られるため、脈無し病とも呼ばれている。
・病名は、1908年に本疾患を発見した金沢大学眼科の高安右人博士の名に由来する。
2.原因
・不明
・何らかのウイルスなどの感染が本症の引き金になっている可能性がある。それに引き続いて、自己免疫的な機序により血管炎が進展すると考えられている。
・特定のHLAとの関連や疾患感受性遺伝子(SNP)も見つかっており、発症には体質的な因子が関係していると考えられる。
3.症状
・病初期より微熱又は高熱や全身倦怠感が数週間や数か月続く。そのため不明熱の鑑別のなかで本症が診断されることが多い。
・臨床症状のうち、最も高頻度に認められるのは、上肢乏血症状。特に左上肢の脈なし、冷感、血圧低値を認めることが多い。上肢の挙上(洗髪、洗濯物干し)に困難を訴える女性が多い。
・頸部痛、上方視での脳虚血症状は本症に特有。
・本症の一部に認められる大動脈弁閉鎖不全症は本症の予後に大きな影響を与える。
・頻度は少ないが、冠動脈に狭窄病変を生じることがあり、狭心症・急性心筋梗塞を生じる場合もある。
・頸動脈病変による脳梗塞も生じうる。
・本邦の高安動脈炎は大動脈弓周囲に血管病変を生じることが多い。
・下肢血管病変は腹部大動脈や総腸骨動脈などの狭窄により生じ、間欠性跛行などの下肢乏血症状を呈する。
・10%程度に炎症性腸疾患を合併し、下血や腹痛を主訴とする。
4.診断
・血液検査による炎症反応の上昇と超音波、造影CT、MRI、PET-CTや血管造影検査により血管の狭窄、拡張および血管の壁が厚くなっていることを確認することで診断。
5.治療
・内科療法は炎症の抑制を目的として副腎皮質ステロイドが使われる。症状や検査所見の安定が続けば漸減を開始する。漸減中に、約7割が再燃するとの報告がある。
・再燃の場合は免疫抑制薬またはトシリズマブ皮下注の併用を検討する。
・血栓性合併症を生じるため、抗血小板剤、抗凝固剤が併用される。
・外科療法は特定の血管病変に起因する虚血症状が明らかで、内科的治療が困難と考えられる症例に適用される。炎症が沈静化してからの手術が望ましい。外科的治療の対象になる症例は全体の約20%。
6.予後
・早期発見の場合、治療も早期に行われるため予後が著しく改善し、多くの症例で長期の生存が可能になりQOLも向上してきている。
・予後を決定するもっとも重要な病変は、腎動脈狭窄や大動脈縮窄症による高血圧、大動脈弁閉鎖不全によるうっ血性心不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、動脈瘤破裂、脳梗塞のため、早期からの適切な内科治療と重症例に対する適切な外科治療、血管内治療によって長期予後の改善が期待できる。
参考サイト
・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/290
・国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/takayasu_arteritis/
・日本リウマチ学会
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/takayasudomyakuen/
本日もご訪問いただきありがとうございました。

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