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巡回健診診察マニュアル 136.最近既往歴で見た疾患 RS3PE症候群

医療
03 /29 2023
RS3PE症候群

1.概念
60歳以上の高齢者に好発し、比較的急性に発症する圧痕浮腫を伴うリウマトイド因子陰性の対称性滑膜炎。
1985年にMcCarty DJらが(1) 予後の良い (Remitting)、(2) リウマチ因子陰性 (Seronegative)、(3) 対称性 (Symmetrical)、(4) 手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎 (Synovitis With Pitting Edema)、の頭文字をとって、RS3PEを記載した。
R=remitting, S3=seronegative, symmetrical, synovitis, PE=pitting edema

HLA-B7, CW7, DQW2陽性率が高いとされる。

VEGFによる血管透過性の亢進がRS3PE症候群患者の手足の浮腫の発現に関与しているものと考えられてい る

リウマチ性多発筋通症の鑑別、悪性腫瘍の除外などが重要


2.原因
悪性腫瘍、リウマチ性多発筋痛症、シェーグレン症候群、パーキンソン病、パルボウイルスなどの感染症と関連が指摘されている。


3.症状
臨床的特徴は、①急性発症、②50歳以上の高齢発症、③四肢の対称性関節炎、④手背、足背の圧痕性浮腫。
比較的急な発症の、左右対称性の手指・手の関節・滑膜炎炎、手の圧痕性浮腫が典型。


4.検査
・赤沈亢進、CRPの上昇がみられる。
・抗核抗体やリウマトイド因子(Rheumatoid Factor, RF)などの自己抗体は原則陰性である。
・手のMRIでは皮下浮腫、滑膜炎、屈筋伸筋腱周囲の液体貯留などを認める。
・レントゲン検査で関節炎の部位に骨びらんなどの破壊像を認めない。


5.治療
・比較的少量のステロイド(プレドニン10~15mg/日)によく反応し、疾患は改善傾向を示す。多くの場合寛解する。
・具体的投与法はPMR(リウマチ性多発筋痛症)に準じる。


参考サイト
・大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科
http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu02-3.html

・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/686

・順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_25.html


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備忘録・雑記ラン
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巡回健診診察マニュアル 135.最近既往歴で見た疾患 IPMN 膵管内乳頭粘液性腫瘍

医療
03 /14 2023
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)

1.概念
膵管(膵液の通り道)内に乳頭状に増殖する膵腫瘍。
粘液を産生することで嚢胞状となることが多く、膵管が太くなることもある。

良性から悪性まで様々な段階があり、経過中に悪性化することがある。

できる部位によって「主膵管型」、「分枝型」、「混合型」に分けられる。
女性よりも男性に多く、60~70歳代に多く見つかる。

多くは良性の分枝型だが、なかには主膵管型で診断時には既に癌化している症例も含まれる。
分枝型IPMNは治療を必要としないものが大半を占めているが、一部には癌化を疑って手術を検討すべきものがある。

IPMNがある人は、ほかの場所にも膵癌ができる危険性が高いことが知られているため、小さな分枝型IPMNでも定期的に検査を受けることが必要。


2.原因
通常の膵癌でも認められる遺伝子の異常が報告されているが、現在のところ原因は不明。
 


3.症状
ほとんどの場合、症状はなく、健診の腹部超音波検査や他の理由で撮影したCTや MRIで見つかることが多い。
悪性の場合、膵臓癌と同様に腹部不快感・体重減少や黄疸で発見されることもある。



4.検査
腹部超音波検査(US)
造影CT検査
MRI(MRCP)検査
超音波内視鏡検査(EUS)



5.治療
原則的には国際膵臓学会で作成された国際診療ガイドラインに則り治療・経過観察が行われる。
主膵管型IPMNと診断された場合には、癌化している可能性が高いため外科手術が推奨される。
分枝型IPMNの場合は、嚢胞の大きさや膵管の太さ、壁在結節の有無や随伴症状など癌化が疑われる所見に応じて、手術するか、定期的な検査により経過観察するかを決定。



参考サイト
・東大病院
https://todai-tansui.com/case/academic/case03.html
・日本肝胆膵外科学会
http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=15
・がん研有明病院
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/pancreas/002.html
・東京医科歯科大学 肝胆膵外科
https://www.tmd.ac.jp/grad/msrg/pancreas/cancer02.html



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巡回健診診察マニュアル 134 最近既往歴で見た疾患 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症

医療
02 /28 2023
心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症(Pulmonary atresia with intact ventricular septum : PA/IVS) 指定難病213

1.概念
心室中隔欠損を伴わず、肺動脈弁、肺動脈弁下、または肺動脈弁上で閉鎖している疾患。
重症肺動脈狭窄と同様に右室低形成を伴うことが多い(右室低形成症候群)。
生存には心房間交通が必須で右房血は左房へ迂回する。
肺血流は動脈管に依存している。
右室と冠動脈が交通している類洞交通を認めることがある。
類洞交通に伴って、冠動脈が狭窄したり途中で途絶していることがあり、その場合、冠動脈血流は高い右室圧に依存していることがある。

新生児心疾患の1~3%で、生後1週間以内発症の心疾患では10%を占める。
その他の心奇形や心外奇形の合併は少ない。


2.原因
先天異常。
原始心筒の心ループ成熟において、房室弁と洞部中隔が心房中隔と整列する過程の異常等、幾つかの心ループ成熟過程異常が考えられているが、その心臓発生異常の起因となる原因は不明。


3.症状
生後まもなくからチアノーゼが出現。
動脈管の自然閉鎖に伴いチアノーゼは増強する。


4.検査
・心エコー所見
純型肺動脈閉鎖では心エコーでは四腔断面で、左室はほぼ正常かやや大きく、右室は小さい。
肺動脈は細く、閉鎖状態は漏斗部閉鎖か弁性閉鎖となる。
肺血流は大動脈から動脈管を通してしか供給されず、その血流を認める。
心房中隔による心房間血流は必要で右左短絡となる。

・胸部X線
肺動脈が細く左側第2弓は陥凹。
Ebstein奇形を伴うと三尖弁逆流による右房拡大で心拡大を呈する。

・心電図
右軸偏位ないし正常軸で、左室肥大所見。

・心臓カテーテル ・造影検査
造影で、右室は小さく、肺動脈弁は閉鎖。
右室収縮期圧はほとんどの例で左室圧より高い。
右室造影で右室の形態と容積、類洞交通の有無と形態(右室依存性冠循環の診断)、三尖弁閉鎖不全の程度がわかる。


5.治療
・内科的治療
生直後はプロスタグランジンE1にて動脈管関存を維持する。
まれに心房間交通が不良で心不全が高度な場合に心房中隔裂開術BASが実施されることがある。
右室の解剖で治療方針が異なる。
一般的に右室は小さいことがほとんどである。
右室は小さいものの流入部、洞部、流出路がそろっていて、肺動脈弁が弁性閉鎖で、将来右室の大きさが正常化する可能性がある場合には、カテーテルにより、弁穿通術を施行し、その後肺動脈弁をバルーン拡大術する。
類洞交通と右室依存性冠循環が存在すれば、肺動脈弁拡大はできない。

・外科的治療
プロスタグランジンE1による動脈管関存維持が長期にわたる場合、新生児期に体肺短絡術を施行することがある。
右室が比較的大きい場合は右室流出路拡大術が行われることがある。
最終的には2心室修復かFontan型手術かone and half手術が行われる。
Fontan型手術やone and half手術は1歳以降に行われる。
右室が小さくて、将来の右室成長が見込めない場合や、右室流出路が筋性閉鎖の場合には、Fontan手術をめざす。


6.予後
病型の重症度、合併する疾患、選択した治療により術後の注意点なども様々。
右心室の発育がよく冠動脈異常のないものでは、治療により血液循環は正常化し、正常児に近い発育発達が見込まれる。
冠動脈異常を伴うものでは、初期治療を乗り越えた後にも、胸痛、不整脈、狭心症のために、突然死を来しやすいといわれている。
右心室の発育が悪く、右心室を利用できない場合は、将来的にはFontan手術ができればチアノ-ゼのない状態で発育発達が可能。



参考サイト
・小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/04_32_040/

・難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4483

・国立研究開発法人 国立循環器病院研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/pediatric_cardiovascular/tr18_pa-ivs/




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巡回健診診察マニュアル 134 最近既往歴で見た疾患 脳動静脈奇形

医療
02 /14 2023
脳動静脈奇形(AVM Arteriovenous Malformation)

1.概念
脳内で動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接吻合を生じている先天性疾患。
吻合部には異常な血管塊(ナイダス)が認められる。
ナイダスを作らずに、動脈から直接太い静脈につながる場合脳動静脈瘻(pial AVF)と呼ぶ。


2.原因
先天異常


3.症状
ナイダスが破れると脳出血やくも膜下出血を起こす(出血発症型)(40〜80%):麻痺、意識障害、言語障害
手足がひきつる発作の原因となっていることがある(けいれん発症型)(20〜40%):体の一部にけいれんがみられ、だんだん範囲が広がっていくジャクソン型けいれんが多いが、突然意識を失い全身のけいれんが起こり、数十秒程度続く大発作も少なくない。
脳動静脈奇形が破裂する頻度は毎年人口10万人あたり1人。好発年齢は20~40歳で男性が2倍近く多い。


4.検査
CTやMRI・MRAなどの画像検査
脳血管造影(カテーテル検査)


5.治療
① 開頭による脳動静脈奇形摘出術 
② ガンマナイフ(定位放射線療法)
③ 血管内治療(塞栓術)
④ 経過観察 


6.予後
出血発症例では年間の再出血率は初年で6~18 %、その後年間2~3 %、非出血例では年間出血率が2~4 %、脳動静脈奇形が増大する割合は0.2~2.8 %。
初回出血で死亡する確率は10 %、再出血の危険性は20 %で、再出血死亡率は13 %、その後の出血による死亡率は20 %。




参考サイト
・慶應義塾大学 脳神経外科
https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/disease/angiopathy/03.html

・京都大学 脳神経外科
https://neurosur.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/dis04/

・国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/avm/



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巡回健診診察マニュアル 133 最近既往歴で見た疾患 網膜中心静脈閉塞症

医療
01 /31 2023
網膜中心静脈閉塞症

1.概念
網膜中心静脈(網膜組織からの血液が心臓に帰るために集まってきて視神経乳頭の中心で集合した血管)に血栓が生じて、血流が低下するために、網膜全体に眼底出血が生じ、視力低下が生じる病気。
非虚血型と虚血型の2つのタイプに分類される。症状や予後が大きく異なる。
一般的に虚血型は視力も0.1以下で、治療をしても大きく視力回復することはなく、時に血管新生緑内障から失明してしまうこともある。。
非虚血型は予後が良好。
発症後3年ぐらいの間に、非虚血型から虚血型に移行する場合が約30%程度あるとされている。
中高年に生じることが多く、大規模臨床試験の平均年齢は65歳前後。
少数ながら20代30代の人に発症することもある。若年者の場合は高血圧の合併がなく、血管の炎症が原因であることが多い。


2.原因
多くの場合高血圧・動脈硬化が原因。糖尿病などもリスクを高める一因。


3.症状
急速な視野異常、変視症、視力低下が生じる。
視野異常は片目の全体が、ぼんやりとかすんで薄暗く見えるが、真っ暗ではない、と言った症状が典型的。一部暗い部分とある程度明るい部分が混在するのも特徴。
視力低下は病状の程度により、手動弁といった高度の視力低下を来たす場合から1.0 近くと正常に近いものまで様々。


4.検査
眼底検査:病変の範囲、血管閉塞の程度を知るため
光干渉断層計(OCT)検査:視力に影響する黄斑のむくみの程度を評価するため
蛍光眼底造影検査:網膜の循環状態を調べることで、病気のタイプ、状態など治療方針の決定に重要な情報を得る


5.治療
黄斑のむくみのために視力低下をきたしている場合は抗VEGF治療が行なわれることがほとんど。
視力がいい場合は、様子を観ることもある。
副腎皮質ホルモン(ステロイド)を眼球の外側に注射することもある。
視神経乳頭での血管や神経の炎症が原因と考えられる場合には、全身への抗炎症療法(ステロイド剤の点滴あるいは内服)を行う。
虚血型の場合には、硝子体出血や血管新生緑内障を予防するために、レーザー治療(汎網膜光凝固)を行う。
硝子体出血を生じた場合には硝子体手術を行い、出血の除去とレーザー治療(汎網膜光凝固)を行う。



参考サイト
・日本眼科学会
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=39
・三和化学研究所
https://www.skk-net.com/health/me/c01_05.html


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Radiology2003

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